この一週間は地獄だった。脱ステロイドをしていたときを思い出すような日々だった。
目次
アトピーならではのニキビと思っていた
はじまりは些細なことだった。いや、些細なことで、どうってことないことだと勝手に思っていた。
唇の右下あたりに小さな発疹が数個できていた。中心に膿を持ったニキビのような発疹だ。
アトピーの薬を塗っていると毛穴が塞がれたり、ステロイド外用薬やプロトピック軟膏の影響などがあったりでニキビ様の発疹ができることはよくあることだ。
だから「いつもの発疹で数日したら自然に治るだろう」と思っていた。
もしかしてカポジ?治るどころか広がるばかり
しかし、治るどころか次の日には発疹は広がっていた。「ちょっとおかしいな・・・」と思ったがそこまで気にしていなかった。
そして、日に日にその発疹がエラや頬、目の横あたりにどんどん広がっていった。
この広がり具合から勝手に「またカポジ水痘様発疹症か?」と思った。そして以前かかりつけの皮膚科からもらっていたバラシクロビル錠を服用した。
カポジ水痘様発疹症とはアトピー患者に併発しやすい皮膚病でヘルペスが悪化したようなものだ。治療は抗ウイルス剤しかない。
以前、この病気にかかったときに医師から「ピリピリした痛みがあり、同じような発疹がでたら早めに服用するように」と抗ウイルス剤であるバラシクロビル錠を貰っていたのだ。
ピリピリした痛みはなかったがニキビ様で発疹の広がり具合からみて間違いないだろうと思った。また抗ウイルス剤は早めに服用したほうが効果的と聞いていたので自己判断で服用したのだ。
バラシクロビル錠でも止まらない発疹
ただ、服用しても発疹はどんどん広がり顔は赤みをおびていく。炎症を起こし化膿してくる様な感じだ。頸部も腫れてきた。なんだか熱もある。さらに発疹は目の周辺まできている。
カポジ水痘様発疹症が目までくると角膜ヘルペスを併発し危険だと聞いたことがある。
「バラシクロビル錠の内服ではなくて、点滴治療が必要なのかも?」「もしかしたらカポジ水痘様発疹症ではなくて違う皮膚病?」など不安な思いが巡った。
そこですぐにかかりつけの皮膚科に受診することにした。
かポジでもアトピーの悪化でもない感染症
病状を医師に伝え診せると「これはカポジ水痘様発疹症ではないし、アトピーの悪化でもない。何かの感染症でしょう」と言われた。そして診察室ですぐにゲンタシン軟膏を塗ってくれた。
「抗生剤を出すので様子を見てください。効果がなければ明日また来てください」と言われた。「えっ?カポジ水痘様発疹症じゃないの?」と思いながら、自分の判断ミスに後悔した。
貰った抗生剤はセフカペンピボキシルとゲンタシン軟膏。それに炎症を抑えるイブプロフェンとかゆみ止めのフェキソフェナジン、胃薬のセルベックスを処方してもらった。
しかし、それらを服用して次の日になっても全然良くならなかった。
そればかりか小さな膿を含んだニキビ様の発疹は広がるばかり。さらに顔も腫れてきた。痒みも相当強い。
「これはダメだ」と思い次の日も受診した。
抗生剤でも軽快せず悪化するばかり
すると医師は「発疹が広がってますね」と言って看護師さんに「VGを塗ってください」と指示を出した。
私はなされるがままに塗り薬をベタベタと塗られた。「たぶんVGって言うのはリンデロンVG軟膏のことなんだろうな」と思った。
そして医師は「新しい薬を追加します。塗り薬も変更します。また、明後日受診してください」と言った。
新しい薬はプレドニン5mg。ステロイドだった。これを1日2回、1回2錠服用するよう言われた。
正直、「これだけ酷いんだからステロイドの内服が必要なんだろうな」っと素人ながら思っていた。そしてこれで今の症状から開放されると思い安心もした。
更に塗り薬もゲンタシン軟膏からストロングクラスのステロイドが配合されているリンデロンVG軟膏に変わった。
ステロイドで症状軽快
2日間、ステロイドを飲んで塗ってすると症状は劇的に軽快していった。内服のステロイドを飲んで、塗ってしているのだから当たり前なんだけど・・・。これで改善しなければ流石にマズい。
医師に診てもらうと「良くなってきましたね。塗り薬をロコイドに変えてプレドニン5mgの用量も1回1錠に減らしますね」と言われた。
症状が良くなってきて心に余裕ができたのかわからないが気になって次のことを医師に聞いてみた。
「今回の発疹の病名は何ですか?今後、何に注意すれば良いですか?」と私は訊ねた。
医師は「今回の発疹はただ単にアトピーの悪化ではない。化膿した発疹が多数現れていたし何かの感染症だと思う。ただ、抗生剤だけでは効かずステロイドじゃないと軽快しなかったので・・・。はっきりとした原因はわからないが症状が首から上の皮膚が見えているところだけなので紫外線による炎症かもしれない。炎症の悪化により化膿してくることもあるし。または何かの接触性皮膚炎、空気感染による感染かもしれない。今後は紫外線に注意するように。また皮膚を石鹸でゴシゴシ擦らないように」と言う返答だった。
はっきりとした病名はわからないようだったが丁寧に答えてくれた。
原因が不明なので不安は拭えないが、そもそもアトピーという「奇妙な」病気と付き合っているのだから仕方ないなと思った。
辛い顔の症状
今回、症状が出て悪化して軽快するまでの期間は一週間。本当に辛かった。
正直、ここまで皮膚の具合が悪くなるのは十何年ぶりだった。自分の顔を見るたびに落ち込んだ。会社も行けなかった。自分はアトピー持ちなんだからこのような皮膚病はこれからもついてまわるのだと不安になった。
アトピーをはじめ特に顔の皮膚病は気持ちもやられる。何もできなくなる。引き込んでしまう。どうしようもない暗闇に自分から落ちていってしまう。
でも、それでも明日はくるし、生きていかなければいけない。それならなんとか前向きに生きていきたい。
今回のことは良い経験でアトピーならこのような感染症も併発するだなと勉強になったんだ。そう思いたい。